飲食店の廃業率・生存率はどれくらい?統計データから推移や今後の見通しを解説

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飲食店は開業しやすい一方で撤退や閉店も多いと言われますが、実態を把握するには統計データで廃業率・倒産件数・生存率の推移を押さえることが重要です。

本記事では、年度別の推移やコロナ前後の変化、開業年数別の生存率、他業種比較を通じて、飲食業界の置かれている環境を客観的に整理します。

さらに、廃業率が高い理由をデータから読み解き、今後の飲食業界の市場見通しと、店舗売却を含む廃業を検討する際の進め方まで解説します。

データで見る、飲食店の廃業率と倒産の実態

飲食店の厳しい現状を客観的な数字で捉えるためには、まず廃業率倒産件数を分けて見ることが大切です。一見すると同じ飲食店の撤退に思えますが、以下のように意味合いが異なります。

廃業(退出)倒産(法的整理など)
状態資産が負債を上回っている(黒字廃業も含む)支払不能などにより事業継続が困難な状態
理由の例・高齢化
・後継者不足
・戦略的撤退
・店舗売却 など
・資金繰りの悪化
・過剰債務
・経営破綻 など
主なデータ元中小企業庁「中小企業白書」など帝国データバンク、東京商工リサーチなど

宿泊業や飲食サービス業は、他業種と比較して廃業率(退出率)が高い水準にあります。これは、飲食業界が参入(開業)しやすい一方で、退出も多いという新陳代謝の激しい産業構造であることを示しています。

倒産件数などの実態データを確認する際は、単年の数字だけで判断せず、複数年の推移から経営環境の変化を読み解くことが実務的です。

年度別の廃業率・倒産件数の推移

年度別のデータを見る際、統計によって対象(個人事業主を含むか、法人のみか)や集計単位が異なるため、まずは定義を確認しましょう。飲食店の廃業率や倒産件数の推移には、以下のような特徴があります。

  • 廃業率の推移(中長期的な視点)
    全体としては緩やかな増減を繰り返しますが、景気後退や消費税増税などの制度変更のタイミングで変動しやすくなります。消費が落ち込むと、固定費の割合が高い飲食店は利益を圧迫され、早期の退出(廃業)を選ぶケースが増加します。
  • 倒産件数の推移(短期的な視点)
    より短期的な経営環境の変化をダイレクトに映し出します。資金繰りの限界点が表面化した結果であるため、環境悪化から少し遅れて件数が増加するというタイムラグがあることを押さえておきましょう。

【飲食店の倒産件数推移(2020年〜2025年)

年度倒産件数推移の背景・市場環境
2020年780件コロナ禍により外出需要が急減し、倒産が急増
2021年569件ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)や協力金など、手厚い公的支援により倒産が大幅に抑制
2022年452件引き続き支援策が下支えとなり、近年で最も低い水準を記録
2023年768件支援策の終了とゼロゼロ融資の返済開始により、倒産が再び急増(前年比で大幅増)
2024年894件物価高(食材費・光熱費)と人手不足が重なり、2020年を上回る過去最多を記録
2025年900件コスト増を価格転嫁できない中小・零細店を中心に限界を迎え、3年連続増加・過去最多をさらに更新

出典:帝国データバンク『「飲食店」の倒産動向(2025年)』

コロナ前後の動向と、地域・規模別の傾向

【コロナ禍の支援終了と過去最多の倒産ラッシュ】

コロナ禍では飲食需要が急減したものの、「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」や協力金などの手厚い支援策により、倒産・廃業は一時的に抑え込まれていました。しかし現在、その支援期間が終了し、以下のような多重苦が飲食店経営者を直撃しています。

  • ゼロゼロ融資の本格的な返済開始
  • 歴史的な物価高(食材費・光熱費などの高騰)
  • 深刻な人手不足と人件費(賃上げ)の負担増

上記で提示した飲食店の倒産件数推(帝国データバンク調べ)を見ても、2025年の倒産件数はコロナ禍初期の2020年(780件)を大きく上回り、過去最多を更新しています。コスト増をメニュー価格に転嫁(値上げ)しきれない店舗を中心に、撤退が一気に顕在化しています。

【地域別・規模別に見る「耐久力」の格差】

立地や企業規模によっても、環境変化に対する耐久力には明確な差が表れます。倒産・廃業のリスク要因をまとめると以下の通りです。数字の背景には、店の努力だけでは解決しにくい耐久力の差がある点が重要です。

区分主な傾向とリスク要因
地域別(地方・郊外)傾向:
日常的な市場(胃袋)そのものが縮小

リスク要因:
人口減少や高齢化など
地域別(都市部)傾向:
開業が盛んで競合が激しい

リスク要因:
入れ替わり(廃業)のサイクルが早い
地域別(観光地)傾向:
インバウンド需要がある

リスク要因:
外部ショック(災害・感染症等)に脆い
規模別(小規模・個人)傾向:
家賃・人件費などの固定費削減が難しく、資金繰りの余力が乏しい

リスク要因:
客離れ懸念により、原価高騰分を値上げしにくい

【開業年数別】飲食店の生存率と廃業率

飲食店は「開業直後」が最も廃業リスクが高いビジネスとされています。初期投資が大きく、売上が安定するまでに時間がかかるため、他業種よりも早期の撤退が集中しやすい構造にあります。

また、飲食店の撤退=赤字(倒産)とは限りません。経営者の高齢化、後継者不足、設備更新の負担などを理由に、利益が出ていてもお店を畳む「黒字廃業」も多く、開業からの経過年数に応じたリスク対策が必要です。

開業1年〜5年の生存率の目安

各種調査機関のデータや業界の一般的な水準を総合すると、飲食店の生存率・廃業率の目安は以下のようになります。

  • 開業1年:生存率 約70%(約3割が廃業)
  • 開業3年:生存率 約50%(約半数が廃業)
  • 開業5年:生存率 約40%(約6割が廃業)

数字は調査によって差があるものの、開業初期に撤退が集中しやすいという傾向は複数の調査で共通しています。

初期に廃業が増える最大の理由は以下の2点です。

  • 資金繰りのショート
    内装や厨房機器などの初期投資回収前に、手元の運転資金が尽きてしまう。
  • オペレーションの未成熟
    見込み違いの廃棄ロス、提供遅延による回転率の低下、過剰なシフトによる人件費高騰などにより、売上があっても利益が残らない。

10年以上の長期生存率と、個人・法人経営の違い

10年以上続く店は一定数ありますが、長期生存のハードルは決して低くありません。年数が経つにつれて、競合との戦い以上に時間経過に伴う問題が経営を圧迫します。

  • 設備の老朽化:厨房機器や空調の更新にまとまった資金が必要になり、捻出できない
  • ライフステージの変化:経営者の高齢化や健康問題
  • 後継者問題:引き継ぎ先がなく、やむを得ず黒字廃業を選択する

また、こうした生存率は個人経営か法人経営かによっても耐久力に差が出ます。どちらの形態であっても、自店の耐久力を客観的に把握し、撤退ラインや設備更新の資金計画をあらかじめ設計しておくことが必要です。

項目個人経営の飲食店法人経営の飲食店
資金調達・採用自己資金に依存しやすく、採用力も弱め融資が受けやすく、人材確保の面でも有利
意思決定のスピードオーナー単独のため、環境変化に即対応可能組織的な手続きが必要で、管理コストも増加
経営の脆弱性オーナーの病気や離脱が「即閉店」に直結組織でカバーできるが、慢性的な人手不足の影響は受ける

他業種との比較でわかる飲食業の廃業率の高さ

飲食業の厳しさを相対的に理解するためには、他業種のデータと比較し、業界特有の産業構造を知ることが必要です。中小企業庁のデータ(※)によると、飲食業を含む「宿泊業・飲食サービス業」は、全業種の中で廃業率開業率ともにトップクラスの水準にあります。つまり、「参入(開業)しやすいが、生き残るのが極めて難しい(新陳代謝が激しい)」という過酷な競争環境にあると言えます。以下は、他業種と比較した飲食業の構造と特徴です。

項目飲食業の特徴他業種の傾向
(例:製造業・建設業など)
参入障壁(開業)低い
(特別な資格不要で個人でも挑戦しやすい)
高い
(大型設備や高度な技術、特殊な許認可が必要)
競合の多さ非常に多い
(常に新しい店舗が参入し続ける)
限定的
(新規参入のハードルが高く、競合が安定)
コスト構造売上は日々変動するが、固定費は下げにくい受注や売上に応じた計画的なコスト調整がしやすい

この構造は、必ずしもネガティブな意味だけではありません。参入障壁が比較的低く、個人でも挑戦しやすい産業であるため、消費者の選択肢は増え、ヒット業態は成長しやすい面もあります。その反面、差別化が弱い店は短期間で埋もれやすく、撤退が早期に起きやすくなります。

他業種と比べて飲食業が難しいのは、売上が日々変動しやすいのに、コストの変動が追いつきにくい点です。天候、曜日、近隣イベント、口コミ評価などで客数が上下しても、家賃や最低限の人員はすぐには減らせません。この固定費の硬さが、廃業率の高さとして表れやすいと考えられます。

※出典:中小企業庁『2023年版 中小企業白書(第2部 第2章 第2節 起業・創業)』

統計データから読み解く、飲食店の廃業率が高い理由

飲食店の廃業率の高さは、決して経営者の努力不足だけが原因ではありません。実際に、帝国データバンクの最新調査(※)でも、物価高(コスト高)や人手不足を直接の要因とする倒産が過去最多ペースで急増していることが報告されています。

各種統計データから見えてくるのは、飲食業特有の環境変化に弱い構造的な要因です。

1. 収益の圧迫
飲食店は原材料費と人件費の比率が高く、売上が伸びても利益が残らないケースがよくあります。少しの客数減や原価上昇で黒字が崩れ、資金繰りが急に悪化しやすい業界です。

2. 固定費による資金繰りの硬直化
家賃などの固定費は、売り上げ連動ではなく毎月発生するため、売上予測を外したときのダメージが大きくなります。好立地ほど家賃が高く、売上の天井が見えた瞬間に撤退判断を迫られるケースがあります。

3. 深刻な人手不足と労務問題
営業時間が長くピーク時間が偏る飲食業は、採用と定着が難しい傾向にある業界です。人が足りないと、営業時間短縮やサービス品質低下で売上が落ち、賃上げで人件費が上がるという二重苦に陥りやすい構造にあります。

4. 競合過多とシビアな評価環境
開業が多い分、近隣に類似点が増えやすく、差別化できない店は価格競争に巻き込まれます。さらにレビュー文化が定着した現在は、味や接客態度が完全に可視化されます。そのため、平均点を下回る店は早期に淘汰されやすい構造にあります。

※出典:帝国データバンク『「物価高」倒産動向調査(2025年)』

飲食店の閉店理由とは?より具体的な閉店理由はこちら

飲食店市場の今後の見通しと廃業率の予測

将来の廃業リスクを考えるには、需要側(人口・消費)と供給側(コスト・人材)の両面からシナリオを持つことが重要です。

今後の廃業率を一つの数字で言い当てることは難しいものの、上振れしやすい条件と下振れしやすい条件は整理できます。需要が横ばいでもコストが上がれば利益が削られ、撤退が増えやすいというのが基本形です。

重要なのは、業界全体が厳しくても、店ごとの打ち手で生存確率が変わる点です。価格転嫁の設計、メニューの粗利改善、営業時間と人員配置の最適化、テイクアウトなど売上源の分散は、統計の波に飲み込まれないための実務的な対策になります。

また、廃業率の議論は撤退を恐れるためではなく、撤退ラインを決めるためにも役立ちます。資金残高、月次の赤字幅、借入返済の見通しを基に、改善で立て直すのか、早期に出口戦略へ切り替えるのかを決めることが、結果的に損失を小さくします。

人口動態や消費トレンドの変化

需要(市場環境)の面では、日本の人口動態と消費者の価値観が大きく影響します。今後の動向として押さえておくべきポイントは以下の3つです。

  • 人口減少と高齢化
    日本の総人口は減少の一途を辿っており、特に地方では日常的な外食需要そのものが縮小すると考えられます。立地によっては需要の回復が見込みにくくなるリスクがあります。
  • インバウンド需要と地域客のバランス
    都市部や観光地では、訪日外国人客が需要を押し上げていますが、災害や感染症などの外部ショックに弱い面があります。そのため、平日需要や地元客の比率をどう担保するかが安定経営の鍵となります。
  • 消費トレンドの二極化
    物価高を背景に、消費者の行動は「徹底したコスパ重視(日常使い)」と「高価格でも納得できる特別感(体験価値)」に二極化しています。どちらの市場を取りに行くのかが曖昧な店は選ばれにくくなると予想されるため、情報管理と顧客からの評価管理が集客の土台になります。

原材料費・人件費の高騰など今後のリスクシナリオ

供給(コスト)の面では、今後数年間、飲食店にとってさらに厳しいリスクシナリオが想定されます。具体的に警戒すべきは、以下の「コスト高騰」と「資金繰り悪化」の連鎖です。

リスク要因具体的な影響と今後の予測
原材料費・光熱費の高騰食材の仕入れ価格や水道光熱費の上昇が常態化。価格転嫁(値上げ)が遅れた店舗から利益が削られ、黒字化が困難に。
人件費の上昇・採用難毎年続く最低賃金の引き上げにより人件費負担が増大。スタッフが集まらず、営業時間短縮による売上減に直結する。
金利上昇と返済負担ゼロゼロ融資の返済本格化に加え、今後の「金利上昇(利上げ)」により利払い負担が増加し、キャッシュフローが圧迫される。

シナリオで考えると、中立は需要が横ばいでコストが緩やかに上がる状態、悲観は需要減とコスト増が同時に起きる状態です。悲観シナリオでは、客単価を上げられない業態、固定費が重い立地、採用難で営業時間が削られる店ほど廃業率が上振れしやすいと整理できます。

廃業を検討する際の流れと「店舗売却」という選択肢

廃業を考えるときは、感情より先に数字を整えることが最優先です。直近の試算表や資金繰り表を用意し、手元資金が何か月もつか、赤字の原因が売上減なのかコスト増なのか、改善余地がどこにあるのかを分解します。ここが曖昧なままだと、改善にも撤退にも踏み切れず、損失が膨らみやすくなります。

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まとめ|飲食店の廃業率データから客観的な経営状況の把握を

廃業率・生存率の数字は、恐れるためではなく、現実的な経営判断(改善・撤退・承継)に活かすための材料です。データを基に自店の状況を点検し、次の一手につなげましょう。

今後は人口動態の変化に加え、原材料費・人件費の上昇が継続する可能性が高く、価格設計とコスト構造の見直しが避けて通れません。改善で立て直すのか、店舗売却で価値を残すのか、データと数字を基に早めに判断できる体制を整えることが、最も現実的なリスク管理です。

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