家賃保証を利用するメリットとは?家賃保証と連帯保証人の違い等を解説

「家賃保証」とは、賃貸物件契約において活用されるサービスです。家賃保証サービスとは具体的にどのような制度・メリットなのでしょうか。今回は、家賃保証の仕組みや役割、貸主・借主・不動産会社のそれぞれの視点でのメリット・デメリットをご紹介します。また、家賃保証に入る際のポイントについても解説しますので、家賃保証に入る際の参考にしてください。
家賃保証(家賃債務保証)とは?
家賃保証とは、借主が家賃の支払いを滞納した場合に備える保証サービス |
家賃保証とは、家賃保証会社が借主(=入居者)の保証人となり、借主に家賃支払いの滞納が発生した際、家賃保証会社が貸主に家賃を立て替えて支払うサービスです。家賃収入が保証されていることで、借主は連帯保証人を探す必要がなく物件を借りることができます。
また貸主にとっても、借主が家賃の支払いを滞納した場合に家賃保証会社が代わりに家賃を支払うため、貸主の収入が安定し、家賃滞納リスクがなく貸しやすくなります。
家賃保証(家賃債務保証)の仕組み

家賃保証を利用する際は、物件の貸主(=賃貸人)・借主(=賃借人)それぞれが家賃保証会社と契約(委託契約)を結びます。借主が家賃を滞納(家賃債務不履行)した場合、貸主が家賃保証会社に立替請求をすると、「代位弁済」として家賃保証会社が借主に代わって家賃を支払います。
家賃保証会社が立替払いをした後、今度は家賃保証会社から借主に対して「求償権」が発生します。家賃保証会社からの請求を受け、借主は家賃保証会社に対して滞納していた分の家賃を支払います。「代位弁済」により借主から貸主への返済義務はなくなりますが、借主は立替をしてもらった家賃保証会社に返済が必要です。
家賃保証会社の役割
家賃保証会社の役割は、物件の貸主と借主の間に立って家賃の支払いを保証することです。家賃保証会社が借主の「保証人」の役割を果たすため、家賃滞納リスクに備えることができ、安定した貸主の収入を確保できます。また、家賃保証会社の行う借主の信用調査により、信用できる物件の借主を見つけやすくなります。
家賃保証とサブリース・連帯保証人の違い
家賃保証と似たサービスとして、「サブリース」が挙げられます。家賃保証とサブリースの違い、また賃貸を借りる際に必要となると思われることの多い「連帯保証人」との違いについて解説します。
家賃保証とサブリースの違い
家賃保証 | サブリース |
借主の家賃滞納時に立替払いをする | 賃貸物件を一括で借り上げ、再貸しする(転貸) |
サブリースは貸主から物件を一括で借り上げて、借主に再貸し(転貸)する形態です。家賃保証同様、借主の収入が安定するため、家賃保証と混同してしまいやすいですが、異なります。
サブリースの場合は、サブリースを行う会社と物件の貸主が契約を締結し、賃貸の入退去や管理などはサブリースを行う会社がすべて行います。家賃保証同様の家賃収入が確保できるだけでなく、物件の管理自体をすべて任せられます。
一方、家賃保証は借主が家賃を滞納したときにのみ、家賃保証会社が代わりに支払うサービスです。
家賃保証と連帯保証人の違い
家賃保証 | 連帯保証人 |
家賃滞納時、保証会社が立替払いをする | 滞納した家賃含む費用を、個人が立替払いをする |
連帯保証人は、借主が家賃を支払えないときに代わりに支払う義務を負う個人です。滞納している家賃以外にも、原状回復費用や修繕費、損害賠償費用なども代わりに支払う必要があり、原則借主と同じ範囲の責任を負わなければなりません。
以前は、賃貸物件を借りる際には、連帯保証人をつけることが多くありました。しかし、損害が大きい場合は連帯保証人にかかる負担が大きく、連帯保証人を探す手間がかかるなどの面から、最近では家賃保証会社を利用するケースが増えています。
家賃保証を契約するメリット

家賃保証を利用するメリットを、借主(=入居者)、貸主、不動産会社の3つの視点からご紹介します。
「借主」にとってのメリット
・連帯保証人を見つけられなくても物件を借りやすい ・万が一の家賃滞納時も借主とのトラブルを避けやすい |
借主にとってのもっとも大きなメリットは、連帯保証人をお願いできる人がいない場合でも物件を借りやすくなることです。連帯保証人は、貸主と同じ範囲の責任を負うため、引き受けてもらえる人を探すのが大変です。そのため、家賃保証会社と契約することで連帯保証人の代わりとなり、物件を借りやすくなります。
また、万が一家賃を滞納してしまった際にも、貸主に対して家賃保証会社が一時的に借主の立替払いを行います。家賃保証会社によっては、借主へのサポートが用意されている場合もあります。
ただし、物件によっては契約時に、家賃保証会社との契約・連帯保証人のどちらも必要である場合もあるため注意する必要があります。
「貸主」にとってのメリット
・家賃滞納の不安軽減 ・家賃滞納発生時の手続き・対応の手間削減 ・家賃保証会社によって信頼できる借主を見つけてもらえる |
貸主にとってのもっとも大きなメリットは、家賃滞納時に家賃保証会社が借主の代わりに家賃を立て替えてくれることです。「毎月の家賃支払いが滞らないか」を気にすることなく、貸主は毎月安定した家賃収入を確保でき、スムーズに物件の運営ができます。
借主の家賃滞納が発生した際にも、再請求や督促はすべて家賃保証会社が行うため、貸主の手間はかかりません。また、借主が家賃保証会社と契約するには審査が必要です。審査によって、信頼性の高い借主を選定することができます。
「不動産会社」にとってのメリット
・物件契約の手続きを円滑に進めやすくなる ・業務効率の向上 |
貸主が連帯保証人を見つけることができず、物件契約時に手続きが滞ってしまうことがあります。しかし、家賃保証を利用する物件であれば、連帯保証人に関する問題が比較的少なく、手続きが円滑に進めることができます。
また連帯保証人の問題を気にすることなく、手続きが円滑に進むことによって、不動産会社としての業務に集中できるため、社内業務の効率化をすることができると考えられます。
家賃保証の契約で注意すべきデメリット
家賃保証を利用する場合のデメリットもあります。注意すべきデメリットについてもご説明します。
「借主」にとってのデメリット
・家賃保証会社に保証料を支払う必要がある ・家賃保証会社の審査が厳しい場合もある ・物件により連帯保証人も必要な場合もある |
借主にとっては、保証料の負担が大きく感じる可能性があります。家賃保証会社によっては、審査が厳しく、物件契約ができない場合もあります。
また、物件によっては、家賃保証会社との契約と、連帯保証人の両方が契約時に必要な場合もあります。保証料が発生するうえに、連帯保証人も探さなくてはならないこともあります。
「貸主」にとってのデメリット
・保証料の負担を好まない借主からは敬遠されてしまう ・対応が円滑でない家賃保証会社も存在する ・家賃保証会社の破産・倒産のリスクもゼロではない |
借主が連帯保証人を立てられる場合は、保証料の負担が大きいと感じられるかもしれません。家賃や敷金・礼金が発生する中で、保証料も負担したくないという借主は、連帯保証人だけで借りられる物件を優先的に選ぶこともあります。
また、対応が遅くスムーズに進まない家賃保証会社も存在します。家賃保証会社の経営状況が不安定であったり、家賃保証のノウハウが不足していたりなどもあります。家賃保証会社自体が倒産してしまえば、家賃保証以前の問題となります。契約する家賃保証会社は信頼のおける会社を選ぶ必要があります。
「不動産会社」にとってのデメリット
・信頼のおける保証会社でないと業務が煩雑になる可能性もある |
不動産会社の視点では、家賃保証会社との連携が十分にできていないと、業務が煩雑になってしまうことも考えられます。審査結果がなかなか出ずに進捗状況が不明であると、貸主・借主の間に挟まれる立場となることもありえます。
そのため、不動産会社としても、信頼のおける家賃保証会社を選べるかどうかが重要です。
【借主向け】家賃保証の契約方法

借主として、家賃保証会社と契約する方法をご説明します。
家賃保証会社との契約に必要なもの
・賃貸保証会社用申込書 ・身分証明書のコピー(運転免許証や健康保険証など) ・収入証明書 (源泉徴収票や給与明細書など) ・在籍証明書 |
審査では、主に支払い能力があるかどうかを見られます。そのため、確認できる身分証明書や収入証明書関連の書類などの提出が求められ、職種や雇用形態、勤続年数や収入、年齢などがチェックされます。家賃は収入の30%程度に収まる程度が目安とされており、それをクリアする収入かどうかも確認されます。
店舗・オフィスなどの事業用の家賃保証の場合には、会社の収益の安定性や保有資産を鑑みて、支払い能力があるかどうかが審査されます。居住用・事業用、家賃保証会社によって契約時に提出を求められる書類や情報は異なります。詳しくは、契約する家賃保証会社にご確認ください。
家賃保証会社との契約手順
1. 審査の申込書を提出する 2. 身分証明書や収入証明書などを提出する 3. 保証会社からの本人確認に応じる |
審査にあたり、審査の申込書や証明書等を家賃保証会社に提出します。家賃保証会社によりますが、審査には1日〜数日程度の期間がかかります。電話等で本人確認を行う場合もありますが、信用調査や本人確認が完了すると契約が締結されます。
【貸主向け】家賃保証会社を選ぶポイント
貸主としてどの家賃保証会社を選んだらよいか、ポイントをご紹介します。
家賃保証会社の経営状況は安定しているか
家賃保証会社は、万一の際に借主との金銭的な問題を解決してくれる存在です。しかし、その家賃保証会社自体の経営が不安定だと、借主が家賃滞納をした際に、対応が遅れたり立替払いしてくれなかったりといったトラブルに繋がりかねません。
経営状況、対応の迅速さや正確さも考慮し、信頼できる保証会社かどうかを見極める必要があります。
保証範囲は充実しているか
家賃保証会社の中には、家賃保証だけでなく、原状回復費用や更新料などもサポートしてくれる場合があります。家賃以外の費用もサポートしてもらうことにより、より安心して物件を運営できます。ただし、保証範囲や内容は保証会社によって異なるため、必要な保証範囲と保証会社が保証してくれる範囲が合っているかどうかを確認して選ぶことが大切です。
物件の種類に応じたノウハウがあるか
賃貸物件は、居住用か事業用かによって、家賃滞納時の対応や原状回復のルールなどが異なります。その分野に詳しい家賃保証会社であれば、疑問点などが相談しやすく、適切な回答を得られます。そのため、貸す物件の種類に精通している家賃保証会社を選ぶことが重要です。
家賃保証の業界動向
家賃保証の利用は年々増加しています。令和4年度の国土交通省の調査によると、何らかの形で家賃債務保証会社を利用する人の割合が、平成22年度の39%から令和3年度には約80%まで、11年間で倍の41%も増加しています。貸主としては、以前の連帯保証人が必要な制度から、より確実に家賃支払いを受け取れる保証会社利用の制度にする傾向が高まってきていると考えられます。

借主としても、近年は高齢単身世帯の増加や人間関係の希薄化を背景に、連帯保証人を頼める人がいないことによって、家賃保証会社を利用するケースが増加しています。
また、2020年4月1日より施行された改正民法により、連帯保証人の極度額を明記しなければならなくなりました。そのため、賃貸借契約書において、連帯保証人の責任限度額を金額として明記することが連帯保証人を見つけるためのハードルを高くしています。
このような実態によって、一般的な賃貸住宅向けの家賃保証サービスは利用されています。しかし、店舗・オフィスなどの事業用物件に対する家賃保証サービスには、まだ課題が多いのが実情です。
家賃保証を選びましょう!
家賃保証とは、物件の貸主と借主のどちらにもメリットがある仕組みです。
借主側は、連帯保証人を頼める人がいない場合にも物件を借りやすくなります。また貸主側によっても、家賃滞納での手間やトラブルを避け、安定した家賃収入を担保できます。家賃保証を活用する場合には、家賃保証会社のサービスや経営状況を考慮して選ぶようにしましょう。
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